「Stay Optimistic 🔴✨」というフレーズに代表されるように、Optimismでは楽観的でいることをよしとしています。Optimismの重要な文書では、たびたびこのフレーズで締めくくられます。
では楽観的であることは、どのような利点があるのでしょうか。今回は、ScheierとCarverによる『On the Power of Positive Thinking: The Benefits of Being Optimistic』のレビューをしていきます。この論文は5ページで構成されています。
本論文には、他の実験結果やソースを引用した箇所がいくつかあります。このブログ記事は厳格な学術記事ではありませんので、各々のソースは直接論文をご確認ください。
楽観主義の測定
楽観主義の測定として、「Life Orientation Test (LOT)」を用いました。これは設問(例えば、「物事が自分の思い通りに進むとはほとんど思わない」といった設問)に対してどの程度当てはまるのか回答させることで、その人の楽観さを測るというものです。
Schulz、Tompkins、Rauは、脳卒中患者とその介護者のLOTスコアを6か月間追跡する研究を行いました。その結果、LOTスコアは患者も支援者も時間とともに低下したものの、低下の絶対的な大きさは非常に小さいものであることがわかりました。つまり、LOTスコアは人生の波にかかわらず、その人の楽観さを正確に評価できることがわかりました。
心理的幸福として、産後うつに関する研究と、大学の新入生の苦痛レベルに関する研究の結果を見てみましょう。前者では、妊娠第3期と産後でLOTと抑うつレベルのテストを実施したところ、楽観的な女性は、出産後に抑うつ状態になりにくいことがわかりました。後者では、大学入学時で楽観的な学生は、3か月後の苦痛レベルが低いことがわかりました。以上の結果から、楽観主義者は、日常の幸福レベルを押し上げることができることがわかりました。
次に、身体的幸福として、冠動脈バイパス手術を受ける男性グループを対象に行われた研究を見てみましょう。その結果、楽観主義者は以下の傾向を持つことがわかりました。
- 手術中に心臓発作を起こす可能性が低い
- 術後回復が早い
- 術後の社会復帰が早い
楽観主義は役に立つのか?
楽観主義者と悲観主義者がストレスに対してどのように対処するかを観察する研究から、実際に楽観主義は役に立つのか検討しています。
AspinwallとTaylorは、大学生活への適応について研究しました。その結果、楽観主義者は悲観主義者よりも、ストレスに対して積極的対処法に頼る傾向が強く、回避に取り組む傾向が弱いことがわかりました。つまり、楽観主義者は、ストレスに対処するために効果的な方法を用いていたのです。
同様の結論は、筆者らによる乳がん患者を対象とした研究でも示唆されてました。この研究の女性たちは、手術前、手術後10日目、3か月後、6か月後、12か月後の追跡調査において、苦痛と対処反応について報告しています。
楽観主義はどこから来るのか?
楽観主義であるという性質はどこから来るのか、筆者らは考察しました。スウェーデンの研究では、LOTを通して、楽観主義と悲観主義の遺伝率は約25%と推定されました。一方、環境的な要因について、子どもが親の言動を見て楽観主義と悲観主義どちらに傾くのかについて、いくつかのモデルを考案し、最近研究プログラムを開始したと述べています。
楽観主義は常に善か?悲観主義は常に悪か?
これまでの研究が言っていることは、楽観的主義は善であるということです。これは正しいのでしょうか。
著者は、楽観主義が裏目に出るケースとして、以下の2つのケースを考えました。
- 楽観的になりすぎる。または、非生産的な方法で楽観的になること。
- 建設的な行動を起こしにくい状況における楽観主義。
前者は、楽観主義者が「果報は寝て待て」のような行動をとることを危惧するものです。しかし、LOTに基づいた研究結果からは、楽観的な人はよい結果を得るためは努力を続けることが部分的に必要だと考えていることがわかっており、この指摘は当てはまらないようです。
後者については、これに直接答えられるのに十分なデータはありません。しかしながら、楽観主義者はまた、状況の現実を受け入れる傾向、状況を可能な限り最善の方向に考える傾向、苦難から個人的に成長する傾向など、感情に焦点を当てた多くの対処反応を活用することができることから、楽観主義は困難な状況でも有利に働くことが示唆されています。
悲観主義が有利に働くことはあるのかということについて、CantorとNoremは最近、防衛的悲観主義という概念を提唱しました。防衛的悲観主義は、万が一失敗が起こった場合に、将来の失敗に対する緩衝材となるため、有用であると考えられます。さらに、防衛的悲観主義は、予想される失敗を心配することで、その出来事に備えた改善行動を促すため、その人のパフォーマンスを向上させるかもしれません。
防衛的悲観主義は効果があるようですが、防衛的悲観主義が楽観主義よりうまくいくことはありません。さらに、短期的に防衛的悲観主義を用いる人は、長期的には楽観主義者よりも心理的症状が多く、生活の質も低いことが判明していることから、長期的には楽観主義でいることのほうが有利であることを示唆しています。
他のアプローチとの関係
著者らは、自分たちのアプローチを帰属スタイルや自己効力感といった他の心理学的構成要素と比較し、類似点と相違点に言及しています。楽観主義はこれらの構成要素と関連しているものの、明確な特徴と意味を持っていることを強調しています。
結論
この分野の研究が現在進行中であることを認め、楽観主義の複雑さと影響を十分に理解するためにさらなる研究が必要な分野を指摘しています。しかし、著者らは、ポジティブシンキングであることは人生に間違いなく影響を及ぼすとも述べています。
参考文献
Scheier, Michael F., and Charles S. Carver. "On the Power of Positive Thinking: The Benefits of Being Optimistic." Current Directions in Psychological Science, vol. 2, no. 1, 1993, pp. 26-30.